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街なか再生海外事例研究Ⅱ 米国メインストリートプログラム 4つのアプローチに学ぶ

街なか再生海外事例研究Ⅱの表紙新たな都市再生の展開

米国メインストリート・プログラム
4つのアプローチに学ぶ
~全米1700地区の大都市・地方都市のダウンタウン(中心市街地)活性化に適用~
街なか再生事例研究 PartⅡ/アメリカ東部・南部
(PowerPoint版 CD-ROM付)

-お知らせ-
本書の続編として、メインストリートプログラムに関するQ&Aと日本への適用の可能性を取りまとめた図書を
中心市街地活性化講習会2003にて配布・解説しました。

目 次

まえがき

第1章 米国ダウンタウン再生の概況と今回調査について

1.米国におけるタウンタウン再生の取り組みの概況
2.事例調査に際しての課題認識と調査方法
3.調査都市データ

第2章 メインストリート・プログラムについて

 1.メインストリート・プログラムとは何か(その目的と性格)
 2.ナショナル・メインストリートセンターの組織と経緯
 3.メインストリート・プログラムを構成する4つのアプローチ
 4.メインストリート・プログラムの運用体制
 5.メインストリート・プログラムの運用財源
 6.メインストリート・プログラムの適用の概況と効果

第3章 メインストリート・プログラムの運用事例に学ぶ

 1.組織(Organization)
 2.促進事業(Promotion)
 3.デザイン(Design)
 4.経済立て直し(Economic Restructuring)

第4章 ヒアリング調査記録

4-1 ナショナル・メインストリートセンター
 1.経緯
 2.組織・体制
 3.メインストリート・プログラムの運用
 4.メインストリート・マネージャー

4-2 事例都市の取り組み状況
 1.デントン(Denton)
 2.リーズバーグ(Leesburg)
 3.ユスティス(Eustis)
 4.キシミー(Kissimmee)
 5.ソールズベリー(Salisbury)
 6.モックスビル(Mocksville)
 7.シェルビー(Shelby)
 8.ウェストフィールド(Westfield)
 9.イングルウッド(Englewood)
10.モーガンタウン(Morgantown)

参考資料
アメリカ南部東部(メインストリート・プログラム実施都市)視察スケジュール
調査対象都市のウェブサイトアドレス
アメリカ南部東部(メインストリート・プログラム)企画編集メンバー

裏表紙 添付CD-ROM(各都市の取り組みをPowerPointで解説)

はじめに

(財)区画整理促進機構は、土地区画整理事業の推進を支援する一方で、地域の人々の智恵と力によって自らのまちづくりを進めていくという取り組みを支援する等のため、機構内に1998年「街なか再生全国支援センター」を設置し、中心市街地の活性化に取り組んでいる地方公共団体やコンサルタント等に対して、様々な支援業務(情報提供、セミナー開催、専門家派遣等の支援活動等)を行っております。

 街なか再生全国支援センターは、中心市街地活性化の新たなノウハウの企画や開発にも積極的に取り組んでおり、これまでに、「街なか居住」「街なか交通」「街なか生活(商業・産業)」「街なか交流(観光・農業)」等に関する具体的な方策を提案・提言してきました。

 今回、アメリカのメインストリート・プログラムについて調査した目的は、日本に先行して中心市街地の衰退という問題を抱え、それを克服しつつある現場を子細に視察・研究することによって、メインストリート・プログラムが持つ効果や可能性を把握するとともに、同プログラムが我が国の中心市街地活性化の参考となるものかどうかということでありました。アメリカと日本とでは、経済・社会の状況や仕組みの違い、あるいは市民の参画姿勢の差があり、メインストリート・プログラムをそのままの形で移入・適用することは適切ではないかとも思われますが、その根本にある理念や考え方は大いに参考になると考えた次第です。

 確かにアメリカと日本では中心市街地の形成プロセスが異なるという側面があります。アメリカの都市では開拓時代から馬車が双方向に往来できる広幅員の骨格道路が整備され、そこにダウンタウンが形成されていきました。日本の都市、とりわけ農道を基礎として自然発生的に市街化が進んだ都市では、十分な道路網が形成されていません。このため、日本では、健全で活力ある市街地を形成するために、土地区画整理事業が大きな役割を果たしてきました。

 しかしながら、道路等の整備水準が高いアメリカのダウンタウンにおいても、高速道路網の発達やモータリゼーションに伴い、郊外に居住地が広がり、ショッピングセンター等の郊外立地が進み、多くの都市でダウンタウンは見捨てられ、1970年代にその衰退が顕在化しました。メインストリート・プログラムは、このような大都市や地方都市のダウンタウンの再生に目ざましい成果をあげつつある方法です。

 わが国の中心市街地の衰退は、バブル経済崩壊後の1990年代から顕在化・問題化し、これに対して、国を挙げて対処するという観点から、1998年に中心市街地活性化法が制定・施行されました。これに伴い、国土交通省をはじめとする関連府省庁による支援制度が充実していき、2002年10月現在で、全国で500を超える自治体で中心市街地活性化基本計画が策定され、その約60%の地区で土地区画整理事業が実施又は計画されております。

 しかしながら、土地区画整理事業等の基盤整備だけで、中心市街地を活性化するこということが不十分だと言うことは、前述のように基盤施設が整備されていたアメリカの都市で衰退を生じたということで明らかです。街なかに人々の気持ちを惹きつけ、自治体、企業、市民の協働によってまちづくり・活性化を推進していく取り組みが不可欠です。そのような観点から、既に土地区画整理事業等で基盤整備を実施してきた都市や計画している都市のみならず、中心市街地活性化を行なおうとする全ての都市において、メインストリート・プログラムは重要な手がかりを与えてくれるものと確信しています。

 本文中に詳しく述べていますが、メインストリート・プログラムに備わる4つのアプローチ(「Organization・組織」、「Design・デザイン」、「Promotion・促進事業」、「Economic Restructuring・経済立て直し」)は、一見すると一般的な取り組みを示しているように受け取られがちですが、そのノウハウはきわめて多様かつ豊富であるとともに、重要なことはこれら4つが一体となって、包括的なまちづくりの方法論となっていることであります。

 メインストリート・プログラムを学んだことで、わが国の中心市街地活性化においても行政と市民・民間を繋ぐ専任的な体制や、ハード・ソフトにわたる包括的な方法が重要であることがあらためて認識されたところです。
 本書についても、単にアメリカの仕組み、方法、事例を紹介するだけではなく、日本でも応用できることについては積極的に提案しています。中心市街地活性化に関わる多様な方々が、本書を熟読され、それぞれのまちづくりに役立てられることを願ってやみません。

 街なか再生全国支援センターは、今後においても、ナショナル・メインストリートセンターやダウンタウン再生に取り組んでいる米国の諸都市との交流、調査・研究、情報交換等を続け、また、わが国のまちづくりを担う人々との連携を図りながら、日本のまちの活性化に役立つ方法の企画・開発と普及に努めてまいります。

平成14年11月 

財団法人 区画整理促進機構     理事長 和 田 祐 之